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選定

【設計者必見】アルミニウム合金の種類と実践で使える選定ガイド!

【設計者必見】アルミニウム合金の種類と実践で使える選定ガイド!

1. はじめに

アルミニウム合金は、軽量で強度に優れ、耐食性が高いため、航空機、自動車、建築、家電など、さまざまな産業で広く使用されています。特に、環境負荷を減らしながら性能を向上させるため、軽量化や強度、耐久性をバランスよく確保することが求められています。また、アルミニウム合金はリサイクルが容易で、持続可能な社会の実現に貢献しています。

1.1 本記事のまとめ

本記事では、アルミニウム合金の特性、使用例、選定方法について説明します。アルミニウム合金は、強度、軽量性、耐食性のバランスが重要で、製品設計において最適な選定が求められます。自動車や航空機の軽量化、建築分野での効率的な素材活用においても不可欠な材料であり、リサイクルしやすい点も大きな利点です。本記事を読むことで、設計の効率化や最適な素材選びに役立つ必見の内容を学べます!

1.2 アルミニウム合金を選定する課題

アルミニウム合金を選定する際、専門書では情報が過多で、異なる合金の特徴がわかりにくいことがあります。また、選定した材料が市場に流通していない場合、再選定を余儀なくされることもあります。本記事では、実際に市場で流通しているアルミニウム合金をピックアップし、それぞれの特徴を明確に示すことで、すぐに実用的な情報を提供します。

2. アルミニウム合金の特性とは?

アルミニウム合金は、軽量、耐食性、成形性の優れた特性を持っています。具体的には、航空機や自動車の部品に多く使われ、燃費向上や性能の改善に貢献しています。例えば、自動車のホイールやボディに使用されるアルミニウム合金は、軽量化を実現し、エネルギー効率を向上させます。

3. アルミニウム合金の種類

アルミニウム合金は、化学成分や用途に応じてさまざまな種類に分けられます。一般的には、「1000」番から「7000」番までの系列があります。それぞれに特徴があり、用途に応じて最適な選定が求められます。

3.1 「1000」番系(純アルミニウム)

  • 特徴:純度が高く、99%以上のアルミニウムを含み、非常に良好な耐食性を誇りますが、強度は低めです。
  • 引っ張り強さ:低い(約70~100 MPa)。
  • 加工性:非常に良好。冷間加工や圧延が容易です。
  • 溶接性:優れた溶接性。
  • 耐食性:非常に高い。酸化膜が自然に形成され、錆びにくい。
  • 用途:食品パッケージ、化学機器、電気機器の部品など。

3.2 「2000」番系(銅合金系)

  • 特徴:銅を主成分とし、強度が高いが、耐食性はやや劣ります。特に航空機や高強度を求める部品に使用されます。
  • 引っ張り強さ:高い(約400~500 MPa)。
  • 加工性:やや難しい。高強度のため、加工が困難になることがあります。
  • 溶接性:溶接性はやや低い
  • 耐食性:低め。特に湿度の高い環境では腐食しやすい
  • 用途:航空機の構造部品、スポーツ用品、車両部品。

3.3 「3000」番系(マンガン合金系)

  • 特徴:マンガンを含み、耐食性が高く、良好な成形性を持つ。強度は中程度で、主に一般的な用途に使用されます。
  • 引っ張り強さ:中程度(約150~250 MPa)。
  • 加工性:優れた加工性。成形がしやすい。
  • 溶接性:良好。
  • 耐食性:高い。
  • 用途:屋根材、壁材、家庭用製品。

3.4 「4000」番系(シリコン合金系)

  • 特徴:シリコンを主成分とし、耐摩耗性や耐熱性に優れていますが、強度は中程度です。特に鋳造用途に適しています。
  • 引っ張り強さ:中程度(約200~300 MPa)。
  • 加工性:鋳造に適しており、加工は比較的簡単です。
  • 溶接性:やや低い。
  • 耐食性:高い。
  • 用途:自動車エンジン部品、冷却器、熱交換器。

3.5 「5000」番系(マグネシウム合金系)

  • 特徴:マグネシウムを含むことで、強度が高く、軽量です。海水などの腐食環境でも優れた耐食性を持ちます。
  • 引っ張り強さ:高い(約300~400 MPa)。
  • 加工性:良好で、プレス加工や溶接が可能です。
  • 溶接性:非常に優れています。
  • 耐食性:非常に高い。特に海洋環境や塩水での使用に適しています。
  • 用途:船舶、海洋構造物、建材、アルミニウムフレームの製品。

3.6 「6000」番系(シリコンとマグネシウム合金系)

  • 特徴:シリコンとマグネシウムを含み、強度、耐食性、加工性のバランスが取れています。溶接性も良好で、建築や一般産業で広く使われています。
  • 引っ張り強さ:中程度(約250~350 MPa)。
  • 加工性:優れた加工性、特に押出し加工に向いています。
  • 溶接性:非常に良好
  • 耐食性:良好。
  • 用途:建材、自動車部品、構造材、機械部品。

3.7 「7000」番系(亜鉛合金系)

  • 特徴:亜鉛を主成分とし、非常に高い強度を持ちますが、耐食性は低めです。航空機や高強度を求められる部品に適しています。
  • 引っ張り強さ:非常に高い(約500~700 MPa)。
  • 加工性:加工が難しいため、熱処理が必要。
  • 溶接性:やや難しい。
  • 耐食性:低い
  • 用途:航空機、スポーツ用具、高強度構造部品。

4. アルミニウム合金の選定基準

アルミニウム合金を選定する際には、以下の要素を考慮する必要があります。

4.1 強度

強度が高いほど耐久性が向上しますが、過剰な強度はコストを増加させます。

4.2 軽量性

軽量化が求められる場合、強度とのバランスを取ることが重要です。

4.3 耐腐食性

特に海洋や湿度の高い環境では、耐食性が求められます。

4.4 コスト

最適な合金を選定し、製造コストを抑えることが求められます。

5.アルミニウム合金の利点と欠点

5.1利点

軽量性

アルミニウム合金は、鉄や銅などの他の金属と比べて非常に軽いです。例えば、同じ強度を持つアルミニウム合金は鉄の約三分の一の重さになります。これにより、航空機や自動車など、軽量化が求められる部品に使用されることが多く、燃費の向上や機体のパフォーマンス改善に貢献します。

強度

アルミニウム合金には強度に差があります。例えば、「2000」番代や「7000」番代のアルミニウム合金は、鉄と同じくらいの強度を持つため、高強度が求められる部品にも使用可能で、直接ねじ加工が可能です。一方、強度が低いアルミニウム合金(例えば「1000」番代や「3000」番代)には、直接ねじ加工を行うことができません。そういった場合には、ヘリサートを挿入してねじを構成します。ヘリサートはネジ穴を強化し、ねじの保持力を高めるために使います。

摺動性

アルミニウム合金は、表面に自然に酸化被膜(約0.1~0.5μm程度)を形成します。この酸化被膜は耐食性を持っているものの、摩擦などによって剥がれてしまうことがあります。剥がれた酸化膜は黒い粉となり、摩耗が増す原因となります。このため、機械的な摺動部品として使用する際は摩耗の進行に注意が必要で、摺動性を向上させるためには潤滑油や追加の表面処理を施すことがあります。

耐食性

アルミニウム合金は自然に酸化被膜を形成しますが、その被膜は非常に薄く、強い耐食性を持つわけではありません。例えば、アルミニウム合金を海水や湿度の高い環境にさらすと、酸化被膜が劣化しやすくなります。しかし、アルマイト処理(陽極酸化)を施すことで、アルミニウムの表面に5~25μmの厚い酸化被膜を作り、耐食性を大幅に向上させることができます。これにより、海水や過酷な湿度環境でも使用可能となり、特に航空機や船舶などでの利用が増えています。

放電加工性

アルミニウム合金は電気伝導率が高いため、放電加工時に発生した熱を迅速に拡散し、「溶融」が抑制されるため、加工には大きなエネルギーが必要で加工に時間が掛かります

リサイクル性

アルミニウムは非常にリサイクルしやすい金属で、資源を無駄なく再利用できます。アルミニウム合金のリサイクルにはエネルギー消費が少なく、原材料を採掘して精錬するよりも大幅に低いエネルギーで処理できるため、環境負荷を減少させる重要な素材です。この特性により、持続可能な素材として注目されています。

5.2 欠点

コスト

アルミニウム合金は高温での処理が必要な場合が多く、そのため製造コストが高くなることがあります。特に、強度を高めるために銅や亜鉛を添加する場合は、合金の加工や熱処理に費用がかかります。これにより、コスト面で他の金属よりも高価になることがあります。例えば、航空機の構造部品に使用される超々ジュラルミン(A7075)はその強度の高さから、高い製造コストがかかります

強度

アルミニウム合金は、鋼鉄などの他の金属に比べて強度が劣ることがあります。特に、安価なアルミニウム合金で過剰な軽量化を行うと、強度が不足し、部品が変形しやすくなる場合があります。そのため、適切な強度を保ちながら軽量化を進めるためには、合金の選定が重要となります。例えば、軽量化を重視した設計であれば、強度が低いアルミニウム合金ではなく、強度が高い「2000」番代や「7000」番代の合金を選ぶ必要があります。

6. よく使用されるアルミニウム合金

4項でアルミニウム合金の種類を紹介しましたが、市場に流通しているアルミニウム合金は極わずかであり、本項で紹介するアルミニウム合金が良く使用されます。それぞれの機械的特性や特徴について詳しく解説します。

6.1 A2017(通称:ジュラルミン)

  • 特徴:A2017は、銅を多く含む合金で、高い引っ張り強さを持っていますが、耐食性は比較的低いです。高強度と軽量化が求められる場所で使用されます。
  • 引っ張り強さ:非常に高い(約470~570 MPa)。
  • 加工性:加工が難しく、特に冷間加工や熱間加工において注意が必要です。
  • 溶接性:溶接性は低く、溶接時に強度が低下しやすいため、特別な処理が必要です。
  • 耐食性:低め。湿度や塩水環境に弱いため、表面処理が必要です。
  • 用途:ジュラルミンケース、航空機の構造部品、軍事機器、高強度が求められる部品

6.2 A2024(通称:超ジュラルミン)

  • 特徴:A2024は、A2017に近い合金ですが、さらに高い強度を持ちます。銅を多く含み、航空機や宇宙関連で頻繁に使用されます。耐食性はさらに低いため、コーティング処理が必須です。
  • 引っ張り強さ:非常に高い(約470~620 MPa)。
  • 加工性:加工はやや難しく、機械加工に特別な注意が必要です。
  • 溶接性:溶接性は非常に低い。溶接時の強度低下に注意
  • 耐食性:非常に低い。塩水環境での使用には防腐処理が必要です。
  • 用途:航空機、宇宙機器、軍事機器。

6.3 A5052

  • 特徴:A5052は、マグネシウムを多く含む合金で、非常に良好な耐食性と適度な強度を兼ね備えています。主に防錆性が重視される用途に適しています。
  • 引っ張り強さ:中程度(約230~290 MPa)。
  • 加工性:非常に優れた加工性。プレス加工や冷間加工が容易です。
  • 溶接性:優れた溶接性。ガス溶接やTIG溶接が可能。
  • 耐食性:非常に高い。海水や湿度に強く、塩水環境でも耐食性を発揮します。
  • 用途:船舶、化学工業機器、屋外建材、タンク、ダクト。

6.4 A5056

  • 特徴:A5056は、A5052に比べてマグネシウム含有量が高く、強度が増しています。耐食性が非常に優れ、特に海洋環境で使用されます。
  • 引っ張り強さ:やや高め(約250~300 MPa)。
  • 加工性:加工性は良好で、冷間加工がしやすい。
  • 溶接性:非常に良好。特に溶接性に優れ、アルミニウム合金としては容易に溶接可能です。
  • 耐食性:非常に高い。塩水環境にも強く、船舶や海洋構造物でよく使用されます。
  • 用途:海洋機器、化学工業機器、船舶部品。

6.5 A6063

  • 特徴:A6063は、シリコンとマグネシウムを含む合金で、軽量化と強度、耐食性のバランスが取れています。特に外装や建材に使用されます。
  • 引っ張り強さ:中程度(約230~310 MPa)。
  • 加工性:非常に優れた加工性。特に押出し加工に適しています。
  • 溶接性:良好。溶接後の強度も保たれるため、建築用に最適です。
  • 耐食性:良好。屋外や一般的な環境に対する耐食性を発揮します。
  • 用途:建材、窓枠、アルミニウムサッシ、家具部品。

6.6 A7075(通称:超々ジュラルミン)

  • 特徴:A7075は、アルミニウム合金の中で最も強度が高く、航空機や軍事用機器で多く使用されます。亜鉛を多く含み、硬度と強度は非常に高いですが、耐食性が低い点に注意が必要です。
  • 引っ張り強さ:非常に高い(約570~710 MPa)。
  • 加工性:非常に硬いため、加工が難しく、専門的な技術が必要です。
  • 溶接性:溶接性は低い。溶接後に強度が低下することがあります。
  • 耐食性:低い。耐食性が弱いため、表面処理(アルマイト処理など)が必須です。
  • 用途:航空機、軍事機器、高強度を要求される自動車部品。

7. 最新技術とアルミニウム合金の未来

アルミニウム合金に関する技術革新は進んでおり、強度向上や製造プロセスの効率化が進んでいます。例えば、3Dプリンティング技術の進歩により、従来の製造方法では難しい形状の部品も作成可能になっています。また、リサイクル技術の向上により、使用後のアルミニウムの再利用が進んでおり、環境負荷低減に貢献しています。

8. 結論

アルミニウム合金は、軽量性、強度、耐食性に優れ、さまざまな産業で欠かせない材料です。選定においては、強度と軽量性、耐久性のバランスを取ることが重要です。最新技術の進歩により、アルミニウム合金はますます多様な分野で活用されることが予想されます。持続可能な社会を実現するためにも、アルミニウム合金の最適な選定と利用はますます重要となるでしょう。




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